パソコンのCPUの冷却ファン(Socket7用)があまりにもやかましいので、 供給電圧を下げて回転を落とすためのチョッパコントローラを 製作してみました。
$Id: index.html,v 1.3 2000-03-06 17:28:37+09 kabe Exp $
購入した Socket7 用の冷却ファン+ヒートシンクは、 電源を入れるとものすごい音を立てて回転します。 ハードディスクよりうるさい。 どうも羽の設計速度(そんなのあるんか)以上で回転しているような印象を受けます。
COOLER MASTER (たぶんDP5-5021)。結構性能はいいらしい
しばらく使ってみても、あまりヒートシンクの温度は上がっていないので、 騒音を減らすためにすこしくらい回転を下げても良いだろうと、 方法を模索しました。
単純に抵抗を直列に入れて電圧を下げるのが簡単そうですので、 まずファンの消費電流を調べてみます。
消費電流からファンのインピーダンスは 70Ωくらいとなりますから、 まずは 50Ωくらいの抵抗を直列に入れてみます。
消費電力は 0.5W くらいになるので、ふつーの1/4W抵抗はダメです。 0.5W の抵抗を並列にして実験してみました。 回転はちょうどいいのですが、抵抗がかなり発熱します。
なぜか 7808 が手元にあったので、これをつないでみました。 パッケージの一部が金属なので放熱は多少有利です。 しかしシリーズレギュレーター故、発熱することには 変わりません。
直接 5V 電源につないでみました。一応回ります。 CPUの放熱も問題ないようです。
ただ、ファンの起動にはわずかにトルク不足のような感じがあり、 起動することはしますが使い続けるにはちょっと不安です。
機器全体でもともと100W以上の電気を食うので、0.5W分の発熱くらい どおってことないのですが、それでは面白くないので ファン用のチョッパ回路を作ってみることにしました。 Green PC準拠(大嘘)
OP1はオペアンプによる典型的な方形波発振器ですが、利用するのは Cの充放電カーブです。このニセ三角波を OP2 で切り出して デューティー可変の方形波を発生します。
発振周波数は、約 1/(R4C1) で 100Hzくらいです。 テスタでデバッグする際は、Cに220μF位をパラってやると 1Hzくらいになって動作確認がしやすくなります。
手持ちの部品の関係で R1〜R3 は5kΩですが、R1〜R3が 同じ値であれば何を使っても構いません。5k-100kくらいでしょう。 小さすぎるとオペアンプを壊します。大きすぎるとバイアス電流で 誤動作するかも。
D1 は電源OFF時にコンデンサの電荷を抜くためのもの。 D2 は誘導性負荷対策です。本来なら D2 には反応の速い ショットキタイプを使うべきですが、手持ちがないので整流用でごまかしてます。 (気安め程度)
LEDは、動作確認のためもありますが、オペアンプの飽和電圧が 電源電圧より狭いのを吸収するためにつけてあります。 正に飽和した時でも一般のオペアンプは Vcc-2V くらいしか出てこないので、 適当にベース側でも電圧差をつけてやらんとトランジスタがONします。 Rail-to-Railオペアンプ(単電源タイプはダメ)であれば LED は不要です。
最初の頃は出力段は NPN で書いていたのですが、CPUファンの 回転検出パルスは GND との接点のようなので、GNDを浮かすとめんどうなことに なりそうです。ので、PNP にして電源側をスイッチングするように変更。
オペアンプはコンパレーターとしてしか使っていないので、 デュアルタイプなら何でもokです。4559 は手持ちのレール品。 (ちょっとぜいたくだね〜)
出力トランジスタも定数不明の手持ち品。PNPで負荷200mA流せるものなら なんでも構わないと思います。
作例では、制御部の消費電力を計算すると 200mW くらいです。 抵抗降圧でも500mWですから、劇的に省エネになっているわけでもない のがちょっと残念。
この回路で一番電力を食っているのが、ベースに入っている LED と R5 です。LED なんかいらんという場合は、 LEDをツェナなどに交換してR5を10kΩくらいまで増やしても動くと思います。
がんばってくらさい。コネクタ類やバイパスコンデンサは回路図に 描いてないので適当に。
いきなりPCにつないでチェックするのは無謀。まずは実験用電源を つないで、
単体で確認したらファンをつないでチェック。 設定が低いと、回り続けることはできるが起動できない領域があるので、 必ず OFF→ON してファンが起動できることを確認します。
動作を確認したら、筐体内の邪魔にならない所に固定します。
取付できそうな所は筐体によって違うので、製作する際は あらかじめどこに取り付るかを決めてから基盤の形状やコネクタの位置を 決めた方がいいでしょう。 上の作例ではコネクタが取付ステーの反対側にあるので、抜き差しが不安定です。
今回はAT電源ユニット用とおぼしき穴にステーを介して固定した。
もっとも重要なのは、
「回転を落としてもCPUが耐えられるのか」。調整したファンを取り付けたらベンチマーク等でCPUを回し、冷却が十分かを 確認します。全開で冷やさないとダメなようならやめましょう。
当然ですが、ファンを外したCPUは、あっという間に熱暴走するので (熱破壊することもある)、火を入れないように。
チョッパ制御は単に降圧するのとは違い、 通電時は一応電源電圧が全部かかっているので、 低目の設定でもモーターは起動します。 (鉄道模型のパルス起動と同じ) より低い回転を得たいなら、発振周期をのばして、ON時に確実に 回り始めるようにすると良いでしょう。
騒音はかなり減りました。今度は電源のファンとハードディスクの音が目立つ。 このファンでの最適な設定は 5〜6V付近のようで、 5V電源をそのまま使っても良かったかなと感じます。
今回は手持ち品を活用したので、新たに購入した資材はゼロです。 が、参考のために試算してみましょうか…
品目 単価 数量 ------------------------------------------ NJM4558 30 1 2SB677 150 1 (廃品種?) 抵抗1/4W 2 5 半固定VR 30 1 発光ダイオード 20 1 整流ダイオード 20 2 基板 100 1 3pコネクタ 100 1 この辺が 3p基板ヘッダ 100 1 高くつく 取付ブラケット、 ネジetc 50 - ------------------------------------------ 合計 630一応「トランジスタ技術」の広告を調べてはみましたが、 価格はかなりいい加減です(ていうかいくらでも変動する)。 結果は有効数字1ケタ以下のつもりでいてください。 実際は「パーツ袋」で足りてしまうこともあるので、もっと安く 作れるはずです。
出力段を半導体リレーに換装すれば、はんだごてコントローラや 電動機の制御に使えます。
今回はフィードバックなしのオープン制御ですので、回転検出パルスを とらえてフィードバック制御にすると、確実性が増してよいでしょう。 (それはマザーボードの仕事?) F-Vコンバータが必要になるので、どこまで簡単な回路にできるか…